●筆者は現在、某大手百貨店の物流子会社に出向している。そしてグループにおける当社の存在する意味・価値を常に考えている。しかし、なかなか答えは見つからない・・・。物流担当者の皆様も同じような境遇の中で、同じ命題にぶち当たり、もがき苦しんでいる方がいると思う。
今回はそのような物流担当者の悩みについて一緒に考え、少しでも明るい兆しが見えたならば幸甚である。
物流子会社の数は?
●残念ながら統計がでていない。少し古いデータではあるが、2016年版のカーゴニュース社の「物流総覧」には496社の物流子会社が列記されている。最近の傾向では、ITやECに関係する企業が物流子会社を設立していることから、数字的には600社近くまで増えていると考えられる。少なくとも、それだけの数の会社の経営者、役職者、従業員がこの問題に直面しているのである。
物流子会社の役割とは?
「株式会社オフィス田宮」の田宮氏の流通経済大学研究所から出された論文によると、
物流部門を独立させることで、より専門的なノウハウを蓄積させ、物流の高度化をめざす
部門ごとに行っていた物流業務を統合し、元請的役割を果たさせる。
物流を事業として捉え、新たな収益源とする。
本体と切り離すことで、より自由な雇用形態や労働条件を設定させる。
本体の人材の受け入れ機関とする。
資金繰りの悪化や、後継者問題で存続 が危ぶまれる運送会社に資本を入れてテコ入れし、子会社化する
当然、これ以外にも担っている役割はあるかもしれないが、大体のところは出そろっているのではなかろうか?
●当社も「物流子会社としてどうあるべきか?」「グループの機能子会社としてどのような役割を果たすべきか?」「そもそも親であるグループ企業に頼ることなく自立した物流会社を目指すべきなのか?」、この時期は禅問答のように繰り返している。
しかし、元をただせば「2.部門ごとに行っていた物流業務を統合し、元請的役割を果たさせる。」というのが物流子会社としてのスタートであった。
これは、物流委託の場合、各部門で各々が各々の物流委託先に業務委託をするのではなく、委託先を集約し、価格的スケールメリットと品質の均一化を図るという意味では大きな役割を果たす。また自社物流の場合も同じく、集約効果と品質の均一化を期待することができる。
そして、そのような業務を行うのあれば、物流におけるノウハウの蓄積と高度化を目指そうということで「1.物流部門を独立させることで、より専門的なノウハウを蓄積させ、物流の高度化をめざす。」という考えが出てくることは当然の流れである。
シェアードサービスなのか?事業なのか?
●ここまでは、グループ会社における物流子会社の存在は、あくまでもグループに対するシェアードサービス(共通業務の提供)が目的になっている。
そして、ここからが大きな分かれ目となる。「3.物流を事業として捉え、新たな収益源とする。」考え方だ。
親会社の仕事は何よりも最優先であるが、その親の仕事を得た物流ノウハウを物流事業として生かそうという事だ。これはグループ外の仕事を取ってくる、すなわち外販をすることである。
親のお金で、親の設備で築き上げた物流ノウハウを、今度のは親の冠を利用して外販するのだからが、本末転倒ではないかという意見もある。
●しかし給与体系は親会社より低く、親からの仕事はやって当然という態度で仕事が投げられる。虐げられた扱いをされている物流子会社のプロパー社員からすると、外販は自分たちの存在意義を確かめ、そしてインセンティブを獲得できる仕事でもある。
背景はさまざまであるが、例えば日産グループからの独立を目標にMBOをした日産陸送も、「ゼロ」という会社として独立した。
また、日立物流のように、もともとは親会社の大量の物量から得た価格交渉力と物流ノウハウが基盤ではあったが、独自の収益体制を築き、今では日本を代表する物流会社の一つとなっている。(日立製作所の株式所有比率は30%、先般業務提携したSGHは29%。近年では、日立からの影響よりも、業務提携先であるSGHとの事業シナジーはかなり大きい。)
では我々は日立物流になれるのか?なるべきなのか?
これは非常に難しい問題であるが、日立物流のような大成功事例があるからこういう考えにいたるのである。我々はもっと、上ばかり見ずに、もっと地に足の着いた考え方をするべきなのか?いやいや、やはり日立物流のように、独立独歩の道を行くのか?
次回はこの疑問について掘り下げていこうと思う。