物流子会社とは?その4 (百貨店の物流子会社としての役割)

筆者は現在某大手百貨店の物流子会社に出向している。そしてグループにおける当社の存在する意味、価値を常に考えている。しかし、なかなか答えは見つからない・・・・。

今回は、物流子会社とは?のその4、今回は百貨店物流子会社としての役割とは何かを掘り下げる。

百貨店は既にオワコン

●百貨店の売り上げはバブル期の1991年の約9.7兆円がピークで、25年後の2016年には、およそ6割の5.9兆円にまでシュリンクをしている。

その背景には、バブル経済、リーマンショックによる経済の悪化やデフレ基調に始まり、近年は可処分所得の減少やモノよりもスマホなどの通信やアプリにお金を使う傾向などが強まっていること、そして「アマゾンショック」に代表されるECの台頭など、さまざまな原因が考えられる。

しかし、何よりも我々百貨店業界が反省しなければならいのは、百貨店としてのコンテンツの衰えである。従来は目利きのバイヤーによる買い付けが中心であったが、近年は場貸しビジネスで、どの百貨店も大体同じブランドが出店し、特徴がなくなってきている。

バブル前の80年代は、「おいしい生活」で代表されるように、百貨店は常に流行を先取りし、情報を発信し、文化をリードしてきた。そういった本来の役割など、今は殆ど感じられなっている。

デジタル化なくしては生きてゆけない

●デジタルコンテンツやスマホアプリ、画像や動画、チャットなどによるライブコマースなど、今はITやデジタルを技術を基盤にしたビジネスが通常となってきている。しかし百貨店業界は2周も3周も周回遅れである。

アメリカでは老舗の百貨店/スーパーのシアーズ(Sears)が倒産するなど考えられないことが起きているが、原因はアマゾンショックだけではない。デジタルを中心にした世の中の消費者動向にアジャストできなかったからだ。

下図は欧米の有名百貨店の売上い推移である。ECやアプリなどを初めとしたさまざまな形でのデジタル対応をしている百貨店は微増ながら売り上げは上昇傾向である。しかし、デジタル化を進めていない百貨店の売り上げは下降傾向となり、明確な違いが出ている。

百貨店が生き延びていくためには、デジタル化は必須なのである。

※アップトレンド(上昇傾向)の百貨店
※ダウントレンド(下降傾向)の百貨店

では、百貨店物流子会社役割は?

●百貨店ビジネスにおける物流費のコントールは当然のことながら、今後の新しい百貨店ビジネスにおけるインフラ作りを物流面からサポートしていくことが、百貨店物流子会社の大きな役割である。

前述のデジタル化は、最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれ、このDXプラットフォーマーになったものが、小売りビジネスの覇権者になる。

そういった流れの中では、ITと物流がカギを握っていることは間違いない。特にこれからのお客様の消費動向は、ネットで見て、店頭で買ったり、店頭でみてネットで買ったりと、リアルとバーチャルを行ったり来たりする「カスタマージャーニー」が主流となる。

そうやって双方のチャネルから送客されてコンバージョンつまり、商品をお買い上げになった商品を配送する、もしくは店頭で受け取るといった物的流通(物流)が重要なKSF(成功要因)となるのである。

物流子会社として親の仕事だけをするのか?

●前回の記事にも書いたが、ある程度の波動を想定したインフラ配備の場合業務の繁閑差から生産余剰が発生する。ましては高品質なサービスレベルを実現するには、機能や設備は多め(高め)に設定される。

我々物流子会社はそういった生産余剰(余剰スペースや余剰車両など)を、有効活用して外販などをすることでマネタイズし、親やグループへの貢献をすることも役割の一つである。

もう一つは外部の案件と触れることで、百貨店以外の商売におけるビジネスモデルやトレンドなどに触れることで、またそのような商材の物流に携わることで、新たなノウハウとナレッジが蓄積されると考える。

そして、そのノウハウとナレッジが百貨店における新たなビジネスモデルを支える物流インフラ構築へ生かされるといった、好循環をもたらすことができる。

まさしくそれが物流子会社の役割なのではと筆者は考える。

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