物流用語 事前の擦り合わせの大切さ(ターミノロジーの統一)

●ご存じのように、物流業界は割とこの専門用を多用することが多いのです。しかし、間違った使いかたや間違って普及してしまっている言葉も多く、また定義もあいまいであるため、経験の長い人間でもつい間違ってしまうこともあります。また、間違った使い方をしていると、その人の蔑んで見てしまうことも物流業界ではよくあることです。

例えば倉庫業務を例にとった場合、同じ作業内容であっても、業種業態や物流の委託先よっては、つかわれる「物流用語」が異なることがあります。また、極端な例では同じ会社なのだけれども、倉庫拠点ごとに、使用される言葉や意味する範囲が異なる事さえあります。

●契約書やSLA(サービスレベルアグリーメント)を締結する際、海外では双方が使用する用語、「物流用語」の定義を明確にすることから始めます。契約書の最初の数ページがこの物流用語の定義、ターミノロジーの統一になる事も珍しくはありません。これは、システムの世界においてシ構築をする前段の要件定義(Requiremet Definition)で言葉の定義を明示化しますることと全くおなじです。

その理由は簡単で、こちらが当然として使用している言葉の意味や範囲が、相手方が別な意味で捉えてしまうことを避けるためです。つまり、お互い正しく業務を理解するためにおこなうのです。

●今回は、基本中の基本にも関わらず、意外に間違って使用されることが多い単語を取り上げてみたいと思います。物流担当者の皆様にとっては、釈迦に説法かもしれませんが、知識の棚卸、または再チェックとして役立ててもらえると幸甚です。

「入荷」と「入庫」、「出荷」と「出庫」の違い

●まずは、ウォーミングアップ。でも、うっかり使い間違えてしまう用語です。

入荷 ・・・ 物流センターなどの敷地に着荷した商品を中に受け入れる。
入庫 ・・・ 棚や指定場所など商品の保管する場所へ納めること。通称「蔵入れ」
出庫 ・・・ 上記の入庫場所から商品を出すこと。通称「蔵出し」
出荷 ・・・ 物流センターなどの敷地から商品が運搬もしくは発送されること。

特に「入庫」と「入荷」は、熟練者でもうっかり使い方を間違えてしまう事の多い代表的な言葉です。

「発送」と「配達」と「配送」の違い

発送 ・・・ 物流センターなどの敷地から商品を送りだすこと。(商品の始点)

配達 ・・・ 商品を目的地に届ける行為を指す。(商品の終点)

配送 ・・・ 発送から配達までの一連の行為を指す。(始点から終点)

納得、理解できますね。

「輸送」と「配送」と「運送」の違い

●ここからは難易度があがります。

輸送は「一次輸送」とも呼ばれます。長距離の移動を伴いながら商品をA地点からB地点へと運ぶ行為をいいます。例えば工場から物流センターまたは別の工場への大量に商品を運ぶ場合を指します。

配送は「二次輸送」とも呼ばります。近距離の小口輸送で、輸送と違い、A地点からB地点への単純移動ではなく、ある拠点から複数個所に商品を送り届ける行為を指します。物流センターなどの拠点から卸問屋や小売店、消費者などに商品を運ぶことを指します。

運送とはトラックを用いた輸送・配送を指します。なお、航空機や船舶で商品を運ぶことは運送とは言いません。

2014年筆者撮影。かつて西濃運輸や福山通運とともに「路線御三家」 と称された老舗の特別積み合わせ業者、「フットワーク エクスプレス」の車両。二〇〇一年三月のことだ民事再生法の適用を申請した。この写真はトールに買収された直後のもので、よく見るとドアの脇に、「トールエクスプレスジャパン」とある。

「路線便」と「宅配便」の違い

●さらに難易度アップです。

まず確かめておきたいのは、「宅配便」「宅急便」の区別は、物流担当者の皆様は今更間違うことはないと思います。

「宅配便」は一般名詞で、「宅急便」やヤマト運輸のサービス名称です。そのヤマト運輸にも「ヤマト便」という路線便タリフのサービスがありますが、あらためて「路線便」とは何でしょうか?

「路線便」の定義としては、「不特定多数の荷主の貨物をトラックに積合せてあらかじめ決められた範囲を決められたコースで定期的に運行するトラック輸送」のことを指します。よって、前述の「輸送」での説明したように、大きな拠点たとえばトラックターミナルから異なるトラックターミナルの運行は「路線便」となります。なお、一般貨物自動車運送事業の一形態である「特別荷合わせ貨物運送」の形態に属します。

一方「宅配便」も「特別荷合わせ貨物運送」の形態に属するものです。「不特定多数の荷主の貨物のトラックに積み合わせて、ある拠点から複数個所へ商品を運ぶ、つまり配送をする行為」をいいます。

例えばヤマト運輸の「宅急便」でいうと、商品の集荷と配送の部分を「宅配便」ヤマトのベースとベースの輸送が路線便(幹線便)という図式になり、この二つが合わさって「宅急便」が形成されているという事です。

佐川急便は宅配便か否か?

●佐川急便が宅配便か否かという議論がよくされます。

その理由としては、1990年代、商業貨物の取り扱いがメインであった佐川急便は、長年の間、宅配便業者として認識されてこなかったのですが、個人向けの宅配便の増加にともなって2000年代は宅配便事業者と認識されるようなったという経緯があります。

しかし、幹線便輸送は外部に委託したり、末端のドライバーは地場の軽四輪個人事業者で構成されたりしてますが、大枠の仕組みヤマト運輸の「宅急便」と全く同じです。つまり宅配便だということです。

なお、繰り返しになりますが、1990年代に商業貨物が中心で、個人向け配達が少なかったため、統計上宅配便として上がってこなかったでけで、佐川急便は実質的には宅配便をしていたことになります。よくある論議なのですが、BtoCだから宅配便、BtoBだから宅配便ではないという定義は厳密には正しくないので要注意です。

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