●いよいよ年度末、棚卸のシーズンがやって来た。物流担当者にとって棚卸は年間の中で最も大きなイベントであります。その棚卸について「いったい誰のために行うのか?」「費用は本来的に何処が払うべきなのか?」すでに当たり前のこととして捉えている行為を、今一度掘り起こして考えてみたい。
法人税法29条では、「棚卸資産の確定についてのべられており、事業年度の終了時における棚卸資産(期末棚卸資産)を原価法や低価法などを用いて確定させる」といった趣旨が書かれている。
つまり、倉庫にある商品は当社の資産であるから、その数量をしっかりとカウントし、いくら資産を持っているのかを確認する作業だという事である。こうなると、棚卸は事業者側つまり荷主のために行う行為だと言える。
しかし、ここであえて反論を承知で言うならば、「棚卸」は物流会社自身のために行う行為ではなかろうか。
自社において在庫管理を実施している会社は別として、在庫管理を含めた物流業務を物流会社に委託している場合において、棚卸は荷主の資産確定のためではあるが、その行為の末、成果物として出てくる数値を元に資産確定をするに過ぎない。つまり、在庫管理を含め物流全般を委託している場合においては、日々の入荷~入庫にいたる物流会社としての作業が在庫管理につながり、その品質が「棚卸」で証明されるのではないだろうか。
つまり、棚卸は物流会社の品質の証なのだ。
●では、棚卸費用はどうなるのか?
荷主と物流会社の関係性にも因るが、通常はかかった人件費等を物流会社にお支払いする。(ピース単位の単価にしている場合も稀にある。)これは、物流会社としての品質の証の為に、荷主が費用を負担しているという事であり、この点は納得がいかない。
私は20数年物流の世界におり、半分は荷主側、半分は物流会社側に所属した。現在は荷主側であるが、物流会社側に所属していた際も、考えは一貫している。
ただし、経営として考えた場合、棚卸の膨大な費用を負担することで利益が吹っ飛んでしまう可能性がある。それだけ、通常の業務が薄利で行われているということである。
よって、双方の継続的な取引の為にも、荷主側に負担してもらうのが、今の情勢では良いように感じる。
●加えて、棚卸で考えなければならないのが、棚卸誤差の弁済である。
一般的に荷主と物流会社との間では棚卸誤差について、金額ベースもしくは数量ベースで棚卸誤差のアローアンスを設定している。また、アパレル商品でよく発生するのが、アイテムが同じでもサイズ/カラーでプラスとマイナスが発生する場合、基本同アイテムなので原価が同じということで、ネット(相殺処理)する場合もある。
そしてもう一つ考えなければならないのが、弁済にあたり上代を適応するのか、下代(原価)を適応するのかである。これは契約時に非常にもめる内容である。
例えば、トラック輸送などの場合は「標準自動車運送約款」といものが国土交通省により定められており、配送中の事故による弁済対象金額は、目的地に商品を引き渡す際の商品価値とされている。つまり、原価である。
物流倉庫での作業の場合は、商品瑕疵の弁済対応金額を事前に定めているところは少なく、荷主側の圧力でなし崩し的に売価を支払うケースもある。
※この棚卸誤差については次回の投稿で取り上げる予定なので、乞うご期待。
●諸々の課題を含んでいる「棚卸」であるが、物流会社としての品質の証であるからこそ、問題が起きた時の対処方法は契約書やSLA(サービスレベルアグリーメント)の中できっちりと明文化すべきなのである。