アメリカで毎年1月の中旬もしくは下旬に開催されるNRF(National Retail Federation)リテールビッグショーは、小売業の戦略および戦術における新たな試みや先端のトレンド、技術を知ることのできる展示会・エキスポである。
今年2020年1月は未だコロナウィルスの影響はなく、スムーズに開催された。残念ながら今年の情報はまだ整理しきれていないのだが、近年の傾向は物流や配送に関係する部分も多いので、今回取り上げてみようと思う。
NRF(National Retail Federation)リテールビッグショーとは
開催地:アメリカ・ニューヨーク
期間:1月中旬or下旬の4日間 2020年は1月12日~14日
出展:800社以上
来場者:99か国から約4万人
主な出展:Walmart, Kroger, Macy’s, Target, Gap, Amazon, Alibaba, JD, GroupoGS, Microsoft, SAP, CISCO, 東芝, 富士通, FedEx, 三井物産, イオン等々
小売業界、システム業界、システムハードウェア業界、SI業界の名だたる企業からベンチャー企業が出展。
近年のテーマ:「IT使った小売の取り組み」「IT会社と小売のコラボ」
近年のBuzzword:多様性、AI、VR、プロジェクションマッピング、Robotics 等々
世界的視点でみた小売業が取り組んでいるIoT戦略
やはりネットとリアル、それを実現するインフラ作りがIoT戦略のトレンドになっている。
- 全米⇒オンラインと店舗の合流、融合
- 中国/アジア⇒モバイルによるショッピング
- ヨーロッパ⇒店舗とオンラインにおける在庫と価格の同期
全米はアマゾンがホールフーズを買収したり、Walmartが店舗を有効活用したECの展開を強化していることからも十分計り知れる。
中国はアリババやJD(京東)の躍進にも表れているように、とにかくモバイル端末を利用した決済をはじめ、フーマーフレッシュなどのフューチャーストアがどんどん登場している。
ヨーロッパはスーパーや百貨店などが成熟していることと、ECの普及も早かったことから、消費者は店舗・オンラインをそれぞれの価値観で使分けたり、リアルとバーチャルを行ったり来たりして買い物をしている。よって、正確な在庫情報と価格の統一は非常に重要な要素となる。
注目は「BOPIS」
BOPIS(Buy Online and Pickup in Store)とはクリック&コレクトと同義で、ネットで注文し、店舗にて商品を受け取る方法をいう。ネットとリアルの融合の1stステップとして実施している小売りも多いが、中にはピックアップ専用のロッカーを街中に置くだけでなく、店舗にまで備え付けている企業もある。
<一例>
Little Caesars Pizza (https://littlecaesars.com/en-us/)
⇒ピザ用の店舗備え付ロッカー
Express ※アメリカ版ZARA (https://www.express.com/) ※下記HPキャプチャー
⇒店舗や市中の宅配ロッカーあり
BOPISは消費者と事業者の両方にメリット
なぜBPOISが注目されているのか、消費者と事業者のメリットという視点で捉えてみたい。(★は特に大きなメリット)
<消費者側のメリット>
送料負担がない
好きなタイミングで受け取り
事前の商品確保★
商品検索時間の短縮
その場で返品できる★
<事業者側のメリット>
EC事業者(特にアマゾン)との差別化★
顧客ニーズ対応
ついで買いへの期待
ブランドエンゲージメント(顧客との接点)★
配送コストがかからない★
BOPISで買ったお客様はの反応は?
今現在BOPISを実施している、前述Expressでは、BOPIS実施以前と後で以下のような数字に変化が表れているようである。非常に興味深い内容である。
顧客満足度 13%UP
購買点数 21%UP
客単価 $58が$59へアップ
顧客接点という意味ではBOPISで買ったお客様の60%が店員とコミュニケーションをとっている。そして、もう一度買いたいBOPISで買ったお客さまは92%もいる。
このことは、消費者側はECの便利さを享受しながらも、時には人間的なコミュニケーションをとりたい意識を持っていることの表れでもあり、店員のコミュニケーションがしっかりと顧客を繋ぎとめているということでもある。
IoT戦略について、日本の小売りはどうあるべきか?
筆者の考えでは、日本が求める姿はヨーロッパとアメリカの中間、もしくは足して2で割った形がフィットするのではないかと考える。
この点については、次回深掘りをしたい。